私は土地、建物、金融資産、ゴルフ会員権などある程度の資産を持っています。相続税対策という言葉は聞きますが、具体的に何をどう始めればいいのかわかりません。最初にやるべきことは何でしょうか。

書店でも相続税対策の本が数多く並んでいます。しかしながら、言葉が専門的であり、また相続税の計算も複雑であることから、実際、自分が所有する資産が相 続税の対象になるのかどうかよくわからないという方が多いと思います。そこで、まずやっていただきたい事は現時点でのご自分の資産、負債のすべてを個々に 把握していただくことです。資産には、土地、建物、預貯金、株式、債券などが一般に思い浮かびますが、保険金、ゴルフ会員権、著作権、特許権、営業権、そ の他書画骨董品なども相続税の対象になります。そしてこれらの相続税の課税対象となる評価額は、国税庁が定めた「財産評価基本通達」により計算することと なっていますので、ご自身が所有している自宅や賃貸マンションはだいたい最近の相場でいくらという感覚とは異なることに注意して下さい。土地をとっても、 居宅の敷地、賃貸マンション敷地、更地、農地その他使用目的により評価の仕方は大きく変ります。また、土地の形によっても変ります。このように相続税評価 額の計算は非常に複雑であることにご留意ください。

実際に相続税を計算したところ、基礎控除額以下でしたので相続税の確定申告書の提出は不要だと思います。計算に当たり、「配偶者に対する相続税額の軽減」 の規定を使いましたので、妻が相続する分に対する相続税がかなりの程度軽減されたことが、基礎控除額以下になった理由です。

ご質問のように相続税の確定申告をしませんと、「配偶者に対する相続税額の軽減」の規定を使うことができません。つまり、この規定は相続税の確定申告書を 提出することで初めて認められるのです。したがって、結局のところ全ての相続財産を評価して相続税法の定めるところにより計算した確定申告書を提出する必 要がありますのでご注意ください。このように相続税の申告書を提出することを条件として認められる規定があることを忘れてしまいますと、多額の相続税が課 税されることもありえます。

2003年から相続税の仕組みが新しくなったと聞きましたが、どのように変わったのか説明してください。

2003 年 1 月 1 日からの贈与については、従来の暦年単位の課税に加え、新たに設けられた「相続時精算課税」制度の選択をすることができるようになりました。この制度は贈与があったときに贈与を受けた者(例:子供)が贈与税の申告をして贈与税を納めておき、将来、その贈与者(例:父)が死亡した際にそれまでの贈与財産と相続時の相続財産とを合計した金額を基礎として相続税額を計算するというものです。ただし、贈与者は 65 歳以上の親、受贈者は贈与者の推定相続人で 20 歳以上の子とされています。
詳しくは、http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/souzo34.htmをご覧下さい。

相続時精算課税制度を選択すると、税金がかからないと聞きましたが、本当でしょうか。

贈与税の非課税枠はありますが、税金が全くかからないというのは誤解です。また、将来相続時に税金を精算する際に、相続税が発生する可能性も十分考えられ ます。詳しく説明しますと、贈与については子供一人当たり 2500 万円までが非課税で、それを超えますとその超えた金額に対し一律 20 %の贈与税がかかります。そして、相続時に生前父から贈与を受けた金額の累計額と相続財産の金額との合計額を基礎に計算した相続税から、それまでに支払っ た贈与税を控除して残額を納めることになります。

相続時精算課税を選択したいのですが、手続きについて教えてください。

相続時精算課税制度は、選択することで適用を受けることができます。受贈者である子供は最初の贈与を受けた年の翌年 2 月 1 日から 3 月 15 日までの間に、管轄の税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出する必要があります。一度この制度 を選択しますと、途中で変更することはできませんので、将来相続税の申告が必要になりますのでご注意下さい。

相続時精算課税制度の概要についてはわかりましたが、どういうメリットがあるのでしょうか。

従来の暦年課税では、贈与税の非課税枠は 1 年当たり 110 万円です。また、それを超えますと税率は贈与財産の金額に応じて 10 %から 50 %の間で課税されます。それに対して、相続時精算課税制度の下では、 1 年当たりいくらという非課税枠ではなく、合計で 2500 万円まで非課税になり、それを超えますと超えた金額について一律 20 %の税率で課税されます。つまり、子供が父の生前にかなりの金額の贈与を受けて、子供はそれを使うことができるのです。相続時精算課税の目的はここにあると言えるでしょう。また、値上がりが見込まれる財産について、相続時精算課税制度で贈与しておくと、将来相続時に値上がりしていたとしても、贈与時の価額で相続税の申告に反映されます。

今後、相続税はどのように変っていくのでしょうか。

これから徐々に明らかになるのでしょうが、既に基礎控除額の縮小などが話題になっており、相続税の増税は不可避と考えます。したがって、早めに相続対策を実行しておくことをお勧めします。